豊田高専サッカー部では、例年、4月30日までが新一年生の仮入部期間で、
5月1日からお客さん扱いしない「正式な部員」として活動してもらっています。
今年は女子1名を含む13名が選手、そして、さらに女子マネージャー1名という大所帯ですが、
是非、全員が5年間部活を継続してくださいね。
少し前になりますが、NHKのためしてガッテンでストレッチングについての特集を放送していました。
番組でまず問題提起とされたのは、ちょっとショックなことに、1998年に行われたオーストラリアの陸軍における実験において、
「ストレッチにケガの危険性を減らす効果はない」
ことが明らかになったということでした。
気になって論文を調べてみましたが、同じ実験について書かれたものは複数存在し、
ガッテンが引用していた論文は、
M. P. McHughとC. H. Cosgraveが、2009年にScandinavian Journal of Medicine & Science in Sportsという研究雑誌に発表した
ということがわかりました。というわけでねつ造ではありません!!
その実験の考察は、ストレッチングによって、筋肉の柔軟性は向上するが、筋力および瞬発力が低下するということで、言われてみれば納得する面もありますが、
ただ、論理的に考えると、
筋肉の柔軟性が向上することによるケガのリスク(肉離れ等)低下
と
筋力および瞬発力が低下することによるけがのリスク(捻挫等)上昇
がたまたま同程度だったということが示されただけとも言えます。
その他、
ストレッチ組においてストレッチングが正しく行われていたか
や
非ストレッチ組においてストレッチングと同等の効果がある準備運動をしていなかったか
についても注視しなければなりません(複数の研究者が査読をしていますので大丈夫だとは思いますが…)。
で、どんなスゴイ新ストレッチングが登場するのかと思いきや、
元日本代表の呂比須ワーグナーさんが紹介してくださった
「アロンガメント・ジナミコ」
というウォーミングアップ・トレーニングは、日本のサッカー少年ならば誰でも知っている
「ブラジル体操」
でしたので、皆さんも含めて、日本中のサッカー関係者が「おい!!!」と画面に向かって突っ込みを入れたことかと思います^^;
動的ストレッチングについては、確かにまとめられた記事はまだ少ないかもしれませんが、
つい先日もJFA提唱の11+をご紹介したばかりです。
ブラジル体操も正しく行わなければ効果が得られませんが、
今回はストレッチングがメインですので、またの機会に後回しにします。
実は、先進的な指導者である江崎監督や宮川コーチは既にストレッチングの利点・欠点をご存知とのことでした。…ので、
豊田高専サッカー部でも
準備体操:ブラジル体操
整理体操:ストレッチング
のようにすっきり仕分けされる日は近いかと思います。
特に、江崎監督はストレッチングの「延ばしすぎ」について危惧されていますので、
整理体操時も含めて、正しく行うことに努めてください。
しかし、
豊田高専において、「ストレッチング」は特別なものであることを忘れてはなりません。
ストレッチングは、1960年頃にアメリカで発表され、1975年のボブ・アンダーソン著「STRETCHING」によって普及しました。
そして、何とこのストレッチングを日本に広めたのは、
当時、豊田高専の教授でいらっしゃった小栗達也先生らだということです!!!
![]() |
小栗先生らの著書 今でも入手できます。 |
日本におけるストレッチングは、アメリカや世界に遅れること約10年、1980年代に入ってからようやく小栗先生らの普及活動によって徐々に広められていきました。
![]() |
大志寮がない!!!!! |
小栗達也先生は、残念ながら1993年に事故でお亡くなりになられていますが、
それまでは体育の授業や学寮において、熱心に学生を指導してくださっていたそうです。
豊田高専学寮の伝統である朝体操は、小栗先生ご指導の「ストレッチング」そのものです。
なお、小栗先生のご子息の小栗仁也先生は、現在でも豊田高専の非常勤講師、および、陸上部課外活動指導員として、豊田高専に関わってくださっています。
![]() |
在りし日の小栗達也先生 仁也先生に瓜二つ??? |
ストレッチングといえば、今回やり玉に挙げられている「進展運動」を指すことが多いですが、
おそらく小栗先生らはその欠点も十分理解していらっしゃって、
今でいう動的ストレッチングに相当する「動きづくり」についてのトレーニング法もご提案されています。
![]() |
これは高専の野球場・ライトポール付近でしょうか? |
大事なことなので最後にもう一度まとめますが、
ストレッチングは、肉離れ等ウォーミングアップ不足で発生しがちなケガの予防には効果があります(断言)。しかし、正しい方法・目的で行わないと筋肉を延ばしすぎてしまう危険性を伴うということになります。
小栗先生の著書を引用すると、
![]() |
正しく守って、行なっていますか? |
![]() |
こちらは2人組の場合の注意事項。 誤った方法でグイグイやってしまっていませんか? |
世に出でてから約50年の年月を経ても揺らぐことのないこれらのポリシーをみると、
間違っているのはストレッチングではなく、ストレッチングを正しくやらない・できない人たちということがよくわかります。
最先端のストレッチング論では、
- ストレッチングの効果は、1)柔軟性向上、2)リラクゼーション、3)日常規則性
- 1)、2)の効果が準備運動に適さない可能性がある
- 3)の効果を期待するため、取り入れることは悪くない
といったところで、基本は整理体操時に行うのが望ましいとされ、準備運動時に行う際は、ブラジル体操のような動きを伴う動作と組み合わせるのが良いとされます。
また、「延ばしすぎ」は準備体操時は厳禁なのは、今回書いた通りですが、
整理体操時であってもよくないと考えられますので、十分気をつけて行なってください。
1 件のコメント:
お疲れ様です。ずいぶん前の記事ですが、見落としてしまっていたようですみません。
小栗先生の業績は、特に全国各地の体育の先生とお話しするとすぐに話題になります(そういえば、ツヅキ先生は仁也先生(現:スポーツスタジオ スプリーム)とは以前からのお知り合いとか?)。
あとは、ラグビーワールドカップの五郎丸選手で話題になった「ルーティーン」にも「3)日常規則性」として触れていらっしゃるのは先見の明がありますね。
コメントを投稿